【修学旅行レポート】京都府立亀岡高等学校 九州方面 22年11月8~11日


壱岐での班別行動

学校間交流、班別研修で ジェネリックスキル育成

 京都府立亀岡高等学校(京都府亀岡市、中嶋知彦校長)は1904年創立の口丹地域の伝統校。普通科に府内唯一の「美術・工芸専攻」を設置するほか、探究文理科を併設しているのが特徴だ。この10年は全校でこれからの社会に通じる力「ジェネリックスキル」の育成に注力。同スキルを「人を思いやる力」「人とつながる力」などの6能力に分け5段階で評価する同校独自のルーブリック「Can―doリスト」を作成し、各学期や学校行事ごとにどのスキルがどの段階まで身に付いたのかを自己評価させ、能力の着実な伸長を図っている。また総合的な探究の時間を「ジェネリックスキル」と名付け、班別での探究的な学習によるスキルの育成を行っている。

 同校では2年生で実施の研修旅行もジェネリックスキルを高めるための重要な行事と位置付けている。近年は、豊かな自然と歴史文化に触れられる非日常体験に加え、島内での班別研修などによりジェネリックスキルの伸長が図れること、生徒の満足度の高さから、長崎県壱岐島に2泊する形が定着。3年前からは異なる環境で学ぶ同世代との交流を図るべく、島内の長崎県立壱岐高校との学校間交流を始めた。

 22年度の修学旅行は、11月8~11日に、3泊4日で実施した。1日目に福岡県北九州市でSDGs研修の後、壱岐島に渡り、2日目は壱岐高校での学校間交流と島内班別研修を行った。3日目は壱岐を出た後、大刀洗平和祈念記念館での平和学習を行い、4日目は博多駅周辺での班別研修を実施した。旅程の大枠は従来と変わらないが、今年度は初日、壱岐への移動途中に北九州市でのSDGs研修を組み込んだ。「旅行会社から北九州市が『SDGs推進の世界のモデル都市』であり、研修メニューが充実していると提案を受けたのがきっかけ」と研修旅行担当の井嵜裕教諭。日本で初めての「SDGs商店街」として知られる魚町銀天街など六つのコースに分かれて施設見学などを行った。

 今年度、2年生はジェネリックスキルの時間に、壱岐高校での発表を念頭に「亀岡に研修旅行を誘致するには?」をテーマにした地元調査や発表用の亀岡紹介動画の製作を行っており、亀岡市が「SDGs未来都市」として取り組んでいることも把握していた。だがSDGs自体の学習は行っていなかったため、北九州市での研修をきっかけに、事前にボードゲームを使って学ぶなど知識を深めた。結果、「SDGsについて学べた上、発表に向けた地元理解の深化にもつながった」と学校間交流担当の川上大介教諭は振り返る。

 2日目の壱岐高校との学校間交流では、ジェネリックスキルの「人とつながる力」「挑戦する力」「協働する力」の伸長を目標に、班単位でジェネリックスキルの時間に作成した動画を見せながら亀岡の魅力を紹介するプレゼンテーションを実施。聞き手の壱岐高生を替えながら各班3回ずつ発表した。旅行後には壱岐での発表を生かして内容をブラッシュアップ。総まとめとして1年生に向けた発表会を行った。

 川上教諭によると、コロナ禍もあって内向きの性格の生徒が多い上、学科や専攻ごとにカリキュラムが違うためにクラス内だけの人間関係が目立ったという。そこで、学年部長の加藤慶宣教諭の発案により、多様性を認め合うことやジェネリックスキルの伸長などを目的に、クラスの垣根を取り払って学年行事や探究活動を行ってきた。

 研修旅行でも同じ目的で、SDGs研修、壱岐班別研修、宿泊先、博多班別研修ごとに、クラスを越えるなど多様なメンバーで別々に編成した。元々付き合いの深くない生徒同士での活動の連続に生徒も最初は苦労していたが、最終的にはほとんどの生徒が活動ごとにメンバーと協力して課題に取り組めるようになった。

 旅行後の感想では、壱岐での体験への満足度が9割に達する。ジェネリックスキルについても生徒自身から「もっと『協働する力』を意識したい」などの感想が挙がるなど、Can―doリストへの意識の高まりが見られた。

 旅行の成果について「旅行前は『仲良しグループ』で固まることが多かった生徒たちだが、旅行後は新しい人とのつながりができ、誰とでも仲良く関われるようになっている」と井嵜教諭。

 加藤教諭は、「内向的な生徒が多いので例年『挑戦する力』の評価が低いのだが、研修旅行後の自己評価では15%ほど達成率が上昇した。『初めてのことに恐れずに挑戦する』などの課題、場面を与えたことで意識して取り組むことができた。結果、研修旅行を通して生徒がひと回り大きくなったと実感している」と総括した。

壱岐高校でのプレゼンテーション

壱岐での班別行動

壱岐でのバーベキュー

北九州環境ミュージアム

 

 
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